福井県のセルプ 課題の森

福井県社会就労センター協議会 (ふくいセルプ)、会員施設の紹介、セルプ商品などを発信しています。

〜 公的支援は必要だがそれ以上に「覚悟」を! 〜

シモナカ経営事務所 所長 下中 ノボル(中小企業診断士)

【1】SELPの諸環境を眺めると

中小企業の経営には厳しいものがあります。

公的機関の発表では、景気は底を打ち、上向きとなっていますが、消費者に一番近い小売業などの消費市場は、かなり厳しいようです。

SELP(授産施設=社会就労センター)を取り巻く環境は、平成15年4月から実施された「措置制度」から「支援費制度」へ移行した仕組みにより、「利用者に選ばれる施設になる」ことが求められています。

いわゆる「市場原理」を福祉の領域でも機能させようというのが、政治のこれからの方向です。

これはご存じのように、「安くて価値あるサービスや商品を提供するところに顧客は流れ、顧客に支持されない企業・商品は市場から退場を求められ、結果として、顧客に好ましい企業や商品だけが生き残る」という、単純な考え方に立つ理論です。(異論はありますが〜)

経済・経営環境が厳しい中で、SELPが一般企業と同じ市場で生き残りをはかるということは、容易なことではないと思います。

SELPという名称の由来を再確認すると、Support of Employment, Living and Participation.(暮らしや仕事への参加を支援する)という元来の意味と、SELF-HELP(自助努力)という英語からなる造語で、「授産」という文字がもつ「仕事を授け与える」という概念を脱しています。

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【2】SELPの経営環境の変化

全国のSELPの経営状況を色んな資料で調べてみますと、今までの仕事の枠を越え意欲的に新しい分野への進出がみられます。

パン・菓子類の製造、印刷・製本などの軽作業、雑貨品の製造、清掃の受託、クリーニング、ダイレクト・メールの発送代行、パソコンの作業代行、オフィス什器などのリース、利用者の制作によるアート作品の販売など多岐にわたります。

過日、滋賀県のSELP振興センターの指導者を招き、勉強会を行いました。その時に話された中に「モノ」より「ソフト・サービス」が扱い商品の中心になりつつある、とありました。この背景には、「単純なモノは工賃の安い海外へ」という、産業界の発想があります。

こうした状況下で、個々のSELP関係者が受注・売り込みにあたるのは容易ならざることです。

これを先ず認識すべきでしょう。

心情的には、「障がい者施設だから好意的に、優先的に〜」ということであって欲しいとは思いますが、そう、甘くはないのが現実ですね。

本稿を書かせて頂くにあたり「平成15年度・厚生労働白書」を見てみました。全体で500ページ余の「白書」ですが、障がい者関係のページは約10ページです。この現実を見るかぎり、できるかぎりの自助努力を覚悟する必要があると思います。

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【3】県内の給与・最低賃金の現状

福井県情報政策課の資料によりますと、平成14年度の県内従業者1人当たりの月収平均(賞与込み)は以下の通りです。

従業者30人以上の企業規模の場合

  • 全産業平均:35万3,664円
  • 製造業:35万7,351円
  • 卸小売業:28万2,964円
  • サービス業:34万5,527円

というところです。意外にも? 高いですね。但しこれは30人以上の企業規模の数字だからかも知れません。中小というより零細企業はもっと低いのが現実です。

一方、最低賃金は、地域・業種によって異なりますが、おおよそ次の通りです。

■ 福井県の現行の最低賃金

  1. 地域別最低賃金=642円/時
  2. 産業別最低賃金
    • 紡績、織物などの製造業=694円/時
    • 繊維機械などの製造業= 744円/時
    • 電気機械器具・部品等の製造業=701円/時
    • 各種商品小売業=712円/時

ところで、わがSELP協関係の賃金(月給)はいくらくらいになるのでしょうか。

平成14年度に実施しました調査では、おおよそ2・4万円でした。「世間相場の何分の一」という現状ですね。もっと払いたいですね。そのために、いまSELPセンターの施設長や職員が「どう考え、何をすべきか」について、次章で検討します。

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【4】経営者感覚と営業感覚を

先ず、施設長や幹部職員は経営者感覚を今まで以上に持つべきでしょう。

では、経営者とは?「経営」とは何でしょうか?

京セラの稲盛和夫会長がいみじくも次のように言っています。

  1. 経営の発想において「その動機に不純なかりしか?」
  2. 経営の結果=考え方 × 熱意 × 能力である

経営の結果は、「考え方」「熱意」「能力」の3つの要素の掛け算で構成されます。

掛け算ですから、どれがコンマ以下であっても総和は減少します。

数字的視点では、経営で生き残るには、「収入を最大にすること」「支出を最少にすること」と、簡潔に述べています。

施設長も職員もこうした、基本を再確認し今の市場で生き残る経営を目指すことです。また、施設長や幹部職員はマーケティング(営業)、マネージメント(部下との喜びの協働)やコーチング(部下の指導法)の勉強を深め「経営力」を付けて欲しいと思います。そして〔一般企業的な営業感覚〕を持って頂きたいと思います。

名目はどうであれ、「助成金」がSELPの世界では脳裏をかすめます。

もっとも、「助成・支援」は必要です。でも、それを「雑収入」に考えられる位に自分たちの事業を、事業らしくしていくことが重要ではないでしょうか。幸い、成功例は滋賀県にあります。学べます。滋賀県でできたことが福井県においてもできないことはないと思います。前進あるのみです。

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【5】振興センターの必要性と協働

滋賀県の事例では、振興センター事業は年間に相当額の利益(非公開・事務局は把握)をあげているということでした。これは、単独施設では得ることのできない大きなメリットだと思います。NPOや社団法人などを有効に組み合わせて振興センターを立ち上げ、積極的に市場や行政に働きかけることが重要だと思います。

振興センターは県内の各SELPのために専門営業マンを置き、各地の役所、企業から受注をし、販売をする、という営業形態を取ります。これで流れを変えましょう。

各SELP単独では出来なかったことを県下統一の「振興センター」とすることで、企業力・営業力を高め、イメージ・アップと機能の強化を図るべきでしょう。

そして高粗利益が得られる仕事や商品開発に取り組みたいものです。ただし、形を整えれば仕事や業務依頼が湧いてくるわけではありません。まず、営業です。

そのためには、県内の全SELPが持つ経営資源(技術・技能、人員、設備、納品速度、納期厳守力など)を総点検し、データベース化して、顧客に提示することで営業力に役立たせるべきです。

また、政治家の方の支援、公的資金(長期・低利)の導入、など企業らしい活動が必要です。時は今、やるべき機運が高まっています。この機会を逸してはならないと思います。言っている時、見ている時は過ぎました。今は実行する時です。

今やらなければ、もう絶対にできない 】という覚悟を持って立ち上がりましょう!

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